Eliud Kipchoge選手といえばマラソンの世界記録(2時間1分9秒)保持者であり、非公式ながら人類で初めてフルマラソンを2時間以内(1時間59分40秒)で走った人です。
最近になって彼の練習メニューが公開され多くの人が関心を寄せたのですが... その中身に特別なことはなく、実に一貫性のある、単調で、そしてとにかくたくさん走る(週に200〜220km)内容だったんだとか。
多くの人が抱くイメージと違う点があるとすれば、彼が練習量全体の85%近くを "低強度" のランニングに費やしていたことでしょうか。
彼の低強度ランのペースは1km4分〜5分ほどだそう。一般人からしたら十分速いペースに感じますが、彼がマラソンのレースで1kmあたり2分55秒で走り続けることを考えると非常にゆっくりペースであることがわかります。
80/20 RUNNING :Run stronger & Race faster by Training slower
Matt Fitzgerald
自分はこの本を読んで練習量全体の80%近くを低強度で行うことが重要だという考えを学んだのですが、Stephen Seiler という研究者が様々な持久系種目のアスリートのトレーニングを分析してみると、種目に関係なくほぼ全ての "成功した" エリートレベルの選手の練習の内訳が、低強度80% / 高強度20%になっていることを発見したんだとか。
成功している選手のほとんどがそういう練習をしているなら、みんなそんな風に練習した方が良いのでは!? ということで研究が始まったのが80/20トレーニングと言われています。
(強度の高い練習が多いと疲れてしまう...)
まず大前提として "練習量" を稼ぐことは重要。実際、ケニア人ランナーが他の国の選手よりも強い理由として、シンプルに練習量が多いことが挙げられています(詳しくは → □ )。
80:20の割合が大切な理由がいくつか挙げられますが、その一つは「練習量をたくさん稼げるから」です。
当然ですが、いつも速めのペースで走っていれば疲れやすく、疲れているとたくさん練習できないし、無理をすればケガや病気のリスクが高まってしまう。一方、強度をしっかり管理することで運動をより多くこなすことができます。たくさん練習した方が身体も強くなるしテクニックも身につきやすい。
ここで一つ疑問。そもそも仕事や家族の都合で練習量が多くない場合でも80:20の割合を守った方がいいのか!?
ある研究によると週に14回(1日に複数回)練習する人でも、週に4回しか練習ない人でも、80:20の割合を守った方がトレーニングの結果が良好だったようで、その理由として「高強度トレーニングの質を高められる」ということが挙げられています。
80/20トレーニングでは全体の20%しか高強度のトレーニングを行いませんが、高強度のトレーニングが重要でないかというとそんなことはない。全体の2割に抑える分、疲労も少なくフレッシュな状態で、集中して高い強度のトレーニングを行うことができるんです。
自分も練習時間が確保できない分、あえて内容を思いっきり高強度に振ってみたことがあるんですが、多くの研究者の先生のおっしゃる通りで、1回1回のトレーニングのダメージが大きく、ただメニューをこなすだけになってしまった印象。効果を実感できる部分もあったものの、全体で見るとうまくいかなかったなぁ〜という経験があります。
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ある研究によると、レクリエーションランナーは中〜高強度で50%、低強度で50%を走ることに自然に引き寄せられる傾向があるそうです。もしかしたら皆さんもついつい速いペースで走りすぎているかも!? ゆっくりのつもりが実はペースが速すぎて練習の効果が勿体無いことになっていることも少なくない...。
少し気にしてみると良いかも!?
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