画像のように足をゴムバンドで繋ぐとランニングの効率が6.4±2.8% も向上するそうです...。NIKEのヴェイパーフライ4%はランニング効率が4%向上することから名付けられたそうですが、それよりも効率が良くなるということ!?
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Connecting the legs with a spring improves human running economy
Cole S. Simpson, Cara G. Welker, Scott D. Uhlrich, Sean M. Sketch, Rachel W. Jackson, Scott L. Delp, Steve H. Collins, Jessica C. Selinger , Elliot W. Hawkes
J Exp Biol (2019) 222 (17)
こちら論文によると、人間のランニングは非常に効率が悪いらしく消費するカロリーのうち8%くらいが前進する速度を維持するのに必要で残りの92%は無駄なんだそうです。
そして、この無駄になるエネルギーの82%近くが接地期(ランニングの足が地面に接している場面)に体重を支えたり重心の方向を修正するのに使われていて、7~30%が脚のスイングに消費されているんだとか。
この研究では ↑ のように両足をゴムバンドで繋ぐことで、脚のスイングに必要なエネルギーが減らせるんじゃないか?という仮説が検証されています。
実験中の様子はこちら → https://movie.biologists.com/video/10.1242/jeb.202895/video-1
その結果...
実験の1回目は両足をバンドで繋いでもあまり変化がなかったものの、回数を重ねるごとにランニング効率は改善し、最終的には 6.4%±2.8% 効率が良くなるという結果に。ちなみに、ストライド頻度(ピッチ)が 7.7%±3.5% 増えたようです。
「ピッチは180くらいが良い」というアドバイスを聞いたことのある方も多いかと思いますが、あれはどういうことかというと...
◎ 体重を支えるにもエネルギーが必要だし、脚をスイングするにもエネルギーが必要。
◎ ピッチが遅い(接地時間が長い&ストライドが長い)と体重を支えるのにより多くのエネルギーが必要な一方、脚のスイングの回数は減るので、足を回転させることに使うエネルギーは少ない。
◎ 反対に、ピッチが速いと体重を支えるにはあまりエネルギーを使わなくて良いが、脚は素早く頻繁にスイングする必要があり、より多くのエネルギーを使うことになる。
◎ そのような、どちらかを取ればどちらかが失われるという関係なのですが、両方のバランスが良いのが180くらいだ ということみたい。
上のグラフを見ると、そのちょうど良いピッチ(グラフがUの字になる底の部分)がゴムバンドを装着すると 8.1% 増えるようです。
股関節と膝関節の働きを見てみると、ゴムバンドのアシストによって脚のスイングに使う力が減っています(青い線)。
つまり、脚のスイングに必要なエネルギーが減るために、上述の体重を支えるのと脚のスイングに使うエネルギーのバランスが変化し、ちょうど良いピッチが8.1%増えたと考えられます。
これは股関節、膝、足首の力発揮の仕方を記録したものですが、これをみるとバンドのアシストによって脚のスイングだけでなく、体重を支えるための力発揮も減っている。
これは 最適ピッチが増える → 接地時間が短くなる(ストライドが短くなる) → あまり力を使わなくて良い というメカニズムのようです。
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まとめると、
◎ ゴムバンドで両足を繋ぐと脚のスイングがアシストされ、最適ピッチのバランスが変化し、ちょうど良いピッチが多くなる。
◎ ピッチが増えるので接地時間とストライドが短くなり、体重支持に必要なエネルギーも減る。
◎ その両方によってランニングに必要なエネルギーが減る(効率が良くなる)。
◎ 初めのうちは "新しいちょうど良いピッチ" に慣れることが必要で、1回目の実験では結果が出ず、回数を重ねるごとにランニング効率が良くなっていったと考えられる。
とのこと。
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ちなみに、実際に外を走って転倒したり何かトラブルはないか?という実験もされていますが特に問題ないとのことでした。皆さんもやってみては!?(笑)
2022-2-2
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